漢文にもO+Vの語順有り(一名 客体の提示)
漢文にもO+Vの語順有り(一名 客体の提示)

漢文にもO+Vの語順有り(一名 客体の提示)

白文(十一文字):

小人之使為國家菑害並至 (大學章句)

漢文法:

「小人之使」の四字の語順が奇妙に感ぜられるかもしれませんが、「小人」は「使」(動詞)に対して客語です。動詞の上に飛び出しておるのは強調のためとでも考えてください。「之」(形式名詞)は「小人」を形式的に再示しておるのみです。「小人をさあ、それをさあ使って国家を治めさせれば災禍が並び至るぞ」というのです。「非夫人之為慟」(論語先進)の「夫人」が「為」の上に飛び出しておるのに同じです。松下文法に所謂間接客体の提示(七一三項)です。本来の語順に直せば「使小人為國家(小人をして国家を為(おさ)めしむ)」となります。「使」は使動を表す修飾形式動詞で常に従属的立場にあります。

訓読:

小人をしてこれ国家を為めしむれば、菑害(さいがい)並び至る

訓読の中には「これ」を訓まないものもありますが、其れが無ければ訓読上は「小人」の提示なることが現れないことに注意してください。「これ」あるが為に他でもない小人なんぞに国家を治めさせれば、の如き気味が訓読にも現れるのです。原漢文は見ず、読み下したものだけを見る方はここに注意されたい。


国政は小人に任せられぬとは何の謂ぞ

『融堂四書管見』に曰く

大抵有國有家而務財用者必自小人始彼為善於其事是以世主甘心焉心計之巧算析秋毫善之之謂也不幸而使小人專國家之權元氣既傷本根既撥則災害並至雖有善者亦不能如之何矣

「いづれの国家にも財用の如きを務める者がおるが、それは必ず小人に於いて始まる、彼らはそういう事務を非常によくするため、主のほうでも勢い其の経理の才に誘われるが、一たび彼らに国家の運営を任せれば、元気はそこなわれ、如何なる人材があろうとも既にこれをどうすることも出来ないようになる」の如き意。これすなわち「国家は利を以って利と為さず、義を以って利と為せ(國不以利為利、以義為利)」の意であります。

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