松下博士曰く
標日119項。中古以前には五活段以外に第六活段があった。近代文にも多少用いられておるが著しくない。近世の文を中心にした文典ならば活用図は五活段で済むが、中古以前の文を中心にする文典は活用に第六活段を設ける必要がある。
又曰く
第六活段は第四活段の一変体である。その用法は意義の実質化にある。(動詞性副詞又は動詞性名詞になる)、標日121項
松尾捨治郎万葉集語法研究15項。マクのクは事の意(由来は標日122項にもあり)。連体形のウ列音をア列に転じたものと説く。見る→みらく
ク活 | く | く | し | き | けれ | けく |
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形容性特別変格 | せ | ○ | き | し | しか | しく |
動作性特別変格 | ○ | ○ | む | む | め | まく |
【例】背向尒宿1之久(一四一二)。これは第四活段のシをそのままにしてクを付ける。
【例】美麻久能富之伎(みまくのほしき)(四四四九)。ノが入っているが、先に引用したとおり第六活段は意義の実質化2であるから一種の名詞とも見られる。名詞であればそれをノで連体的に運用したところが当たり前のことである。見むことのほしきである。
【例】妹目之見巻欲家口(いもがめの見まく欲しけく)(二六六六)。『見まく』も『欲しけく』も共に第六活段。見むこと欲しいこと。これを会いたいと欲するとやっては意訳である。
惜しむ、望むは四段活であるから第四活段は—uである。よってほんらいは第六活段は惜しまく、望まくである。憾むは上二段であるから第四活段は—uruである。故に憾むらくとはなる。